ぎゅってしてもいいですか。






「それにしてもさぁ」


明日のイベントへのお客の呼び込みと、売店の声で騒がしい廊下を歩きながら、南緒がたずねる。


「ん?」


「詩星のそのカッコ、過激すぎ」



怪訝そうな、哀れんでいるような、そんな顔で見てきて。




んぁー……。


あんま気にしてること言わないでください……。



「いくらなんでも……小悪魔のカッコって(笑)」



まぁね、そりゃそーでしょう。


なんたって胸元全開なんですから。

しかも黒のピチピチワンピース。

ついでにミニスカ……。

おまけに足はあみタイツ。



……過激すぎにも程があるっ。



「文化祭にそぐわなすぎて、みんなの視線がやばいよ?」



ぐっ。すみませんね!!


だってだってだって……!!


男子が勝手に決めちゃったんだもんっ!


うちのクラスの女子、なぜかみんなこれを着たがらなくて……。


結局余り物になっちゃったんだよぉっ。


まあ、着たがらない理由は分からなくなかったけどっ!


いくらなんでも私だってこれは……。



まわりの目が痛すぎて、恥ずかしすぎて、悲しすぎて、一刻も早くここから逃げたい……。



< 89 / 421 >

この作品をシェア

pagetop