ぎゅってしてもいいですか。
「……あの、ちょっと」
「はい?」
やばい。あんまりあったかいもんだから、ボケッとしちゃってた。
くるっと後ろを振り向く。
あれ、なんだろ。このマスカットの香り。
保健室全体を包み込むような……。
「……アザできちゃって。痛いからシップ貼ってもらえる?……って、あれ?」
不思議そうな声が聞こえたと思ったら、私の頭の中は一瞬にして思考停止した。
「な、ななな永澤くん……?!?!」
その名前を口にした瞬間、心臓が思い出したかのようにドクドクと激しく鳴り出す。
保健室には、みんな帰ってしまって誰もいない。
そんな状況が、さらに私を緊張させた。
「え、えっと、シップ、シップね!」
慌ててシップを取り出そうとすると、消毒用のワタが床に落ちてしまった。
もう、パニック状態。
ふいにくすっと笑い声がしたかと思ったら、
あわあわしているところに永澤くんの手が伸び、ワタを拾ってくれて。
「どーぞ?……ふっ」
……わ、笑った……。てか、笑われた……。
その可愛すぎる笑顔を直視できなくて、そっぽを向いてお礼を言う。
ドキドキで震える手で、永澤くんからワタを取ろうとした。
────が。