ぎゅってしてもいいですか。
────カランカランカラン。
突然ベルの音があたりに響く。
「2―A、売り切れでーす!」
シュークリームを売っていた生徒らしい子が声を張り上げて。
……え。
えええ。
ええええええええええええ──っ!!!!!!
そんなぁあぁぁ……。
「あははっ、ドンマイドンマイっ。まー、しゃーないわなぁ」
落ち込む私の背中をバシバシ叩いて、盛大に笑う南緒。
並んでいたお客さんたちも、残念そうに帰ってく。
「あーっ、南緒ちゃんと詩星ちゃんだーっ!!♡」
甘ったるい声に、甘ったるい香り。
声のするほうを見るまでもなく、誰だかすぐにわかった。
「エンジェルちゃん?」
「そーだよ♡エンジェルだよっ♡覚えててくれて嬉しい~」
そう言うエンジェルちゃんは、シュークリームの屋台に立っていて。
「あ、そーいえばゆう、2―Aだったね。売り子だったの?」
「そーだよぉ♡エンジェル、スイーツ売ってみんなの役に立てたのっ♬」
問いかける南緒にふわふわの髪を揺らして、すごく嬉しそーな顔をするエンジェル(ゆう)ちゃん。