焦れ甘な恋が始まりました
「お疲れ」
「陽……お疲れ様。それより、なんで私服なの?学校帰りなら、制服のはずでしょう?」
目の前にいる陽は、学校帰りだというのに下はジーンズに、上はネイビーのセーター、首元からは白シャツの襟が覗いているという、なんともラフな格好で。
肩には大きめの黒いスポーツバックを担いでいるけれど、一見してみたら、とても学校帰りの高校生とは思えない出で立ちだ。
「なんか、母さんが杏の会社に寄るなら、会社の人たちに杏が高校生に手を出してるとか変な勘違いされないように私服で行けって。噂にでもなったら、杏が迷惑するから……とか。それでさっき、駅のトイレで着替えてきた。セーターの下は、面倒くさいから制服のシャツのままだけど」
「お母さん……それはまた、斜め上の心配をしてくれちゃって……」