焦れ甘な恋が始まりました
「えーと、コレね、蘭に渡す一週間分の料理が入ってるの」
「蘭に?……ああ、そういえば、杏に料理作ってもらってるって、前に蘭が言ってたかも。それが、ソレか」
「うん、そうなの。毎週月曜日に蘭のマンションの宅配ボックスに入れて帰るんだけど……それで今日も」
「……ふぅん。まぁ、いいけど。……貸して」
「え?」
「重そうだし。途中まででも、俺が持つよ」
言いながら、一瞬だけ柔らかな笑みを浮かべた陽は、私の手から易易(やすやす)と保冷バックを攫っていった。
……ホントに、少し離れている間に、随分逞しくなっちゃって。
陽の小さい頃のことを思い浮かべたら懐かしい気持ちになって、我が弟ながら、陽は優しい男の子に成長してくれたと思う。
今はそれがなんだか、誇らしい。