焦れ甘な恋が始まりました
相変わらず端正な陽の顔を見つめながら、「ありがとう」と伝えれば「……別に」と、ぶっきらぼうな返事が返ってきた。
その照れ隠しな返事に思わず顔が綻んで、再び胸が優しさに包まれる。
「せっかくだし、陽も蘭のところに寄ってく?蘭はいないとは思うけど、でも……」
「……いいよ、蘭は。杏と違って、蘭は彼女見せろとか部活のこととか色々口出してきてウルサイし」
「あはは。蘭も蘭なりに、陽のこと心配なんだよ。可愛い弟だし、蘭も昔から陽のこと可愛がって――――」
それは、そう。
お互いに兄弟の話をして笑い合いながら。
駅までの道程を久し振りに二人で並んで帰ろうかと、歩を進めた時だった。