焦れ甘な恋が始まりました
「日下部、さん……?」
「し、下條さん……」
そこには今日もとてもスーツの良く似合う、下條社長が立っていて。
私達は思わず互いを見つめ合い、示し合わせたように驚き、固まっていた。
な、なんで社長が裏口から……?
寄りにも寄って、こんな時間に……
「……誰?」
「っ、」 「!」
だけど、互いに声を忘れて見つめ合っていた私達を現実へと引き戻したのは弟である陽の、あっけらかんとした声で。
それに思わずハッとして数回瞬きを繰り返せば、再び陽がキョトンとした表情で私を見つめながら、「杏の会社の人?」と聞いてくる。