焦れ甘な恋が始まりました
 


「あ、あの!社長――――」

「……初めまして。こちらこそ、杏がいつもお世話になってます。突然、会社まで来てしまって、すみません。今日は、杏が一昨日、家に来た時に忘れていった服を届けに来たところで」


「!」

「い、家に忘れてった……服……?」


「はい。あ……そうだ、渡すの忘れてた。はい、コレ」


「あ、ありがとう……」

「……、」



だけど意外にも、そんな社長の様子に触れる素振りも見せず。


淡々と社長へと挨拶を返した陽は、何故このタイミングで思い出したのか、そもそもの、おつかいの素(もと)を私へと手渡した。



「次からは、忘れないように気を付けて」



……なんというか、マイペースというか、時々天然っぽいというか。


姉の私からしてみたら、こういうところも可愛いんだけど、やっぱりまだまだ子供なんだなぁと思ってしまう。


 
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