焦れ甘な恋が始まりました
「こうしてると、まるで新婚夫婦みたいだね」
遠い昔に、そんなセリフを聞いたことがあると思ったら、それはよくある恋愛ドラマの中の出来事だった。
3年ほど付き合っていた元カレとは、学生時代はお互いが実家暮らしだったこともあり、手料理を振る舞うような場面がなかった。
社会人になり、それぞれが一人暮らしを始めて手料理を振る舞うようになってからも、スーパーへの買い出しは私一人で行っていた。
仕事帰りにスーパーに寄って、食材を買って。
渡されていた合鍵で部屋に入ると、料理を作って彼の帰りを待つ。
そんな有りがちな付き合いの中、彼が仕事終わりで帰ってきて、必ず言っていたセリフがあった。
「なんか、実家と同じ匂いがして落ち着く」
お味噌汁と、炊いたばかりの白いご飯。
それが好物だと言っていた彼は、その頃から私を自分のお母さんのように思っていたんだろう。