焦れ甘な恋が始まりました
 


……当たり前かもしれないけど、部屋の中も、社長の香りがする。


「入って」と促されるまま部屋の中に足を踏み入れれば、まるで社長に抱き締められているかのような錯覚に陥って、今度こそ目眩で倒れそうになった。


2LDKほどの広さの部屋は、無駄なものは一切なく、モダン調ベースにとても品良くシンプルにまとめられている。


12畳ほどのリビングは広々としていて、キッチンは対面式のカウンターキッチン、4人ほど座れるダイニングテーブルの備え付け。


壁掛けの大きめなテレビの前には趣のある木目が印象的なローテーブルとチャコールグレーの大きなソファーが置かれていた。


目の保養程度の観葉植物は置いてあるけれど、その他に目立った家具は見つけられない。


本当に、必要最低限。

あまり生活感の感じられない部屋に、社長の生活の一部を見たような気がした。


 
< 173 / 380 >

この作品をシェア

pagetop