焦れ甘な恋が始まりました
「社長……謝らないでください……」
言いながら社長を見上げれば、困ったように笑う社長と再び目が合った。
たった今、私が思い知った感情は、女ならではのものであり、男の人にはもっと……本能的に求めるものがあるということくらいは、わかってるつもり。
だから社長には……きっと、嫌な思いをさせてしまった。嫌われても仕方がないと思うのに。
「すみません、私……」
「もう、謝らなくていい。あのまま流されてたら……いつか後悔させてたかもしれないし、そんな風に追い詰めたいわけじゃないから」
「でも……」
「そもそも俺は、そういうところも全部引っ括めて、日下部さんのことを欲しいと思ったんだ。だから、日下部さんが謝るようなことは一つもない」
――――日下部さん。
再び距離の離れた名前に、やっぱり自分勝手に胸が痛んで、そんな自分に心底嫌気が差した。