焦れ甘な恋が始まりました
「はぁ……」と。一度だけ大きく息を吐いた社長は、ゆっくりと私の背中に手を伸ばすと、中途半端に下がったワンピースのファスナーを元あった場所まで引き上げた。
一瞬触れた指先と、優しく撫でられた髪。
その手の温かさに縋るように社長を見上げれば、今度は柔らかな笑みが向けられる。
「まぁ……でも。これだけは覚えておいて欲しいけど」
「え?」
「俺は、いつか、何がなんでも手に入れる。その心も……身体も」
「っ!」
「だから、改めて覚悟しておいて?」
その言葉と同時に落とされた、甘いキス。
見上げれば、力強い瞳が私を見つめいて、渡されたその熱は社長に家まで送ってもらったあとも尚……しばらく、消えることはなかった。