焦れ甘な恋が始まりました
下條社長に名前を呼ばれて慌てて視線を彼の方へと戻せば、今日もスーツの良く似合う社長が私を見て微笑んでいる。
その笑顔に、必然的に早鐘を打つように高鳴る心臓。
熱を持ち、赤くなっている耳に、どうか社長が気付きませんようにと必死に心の中で唱えてみる。
けれど社長はそんな私を見て、何もかもを見透かしたかのように微笑みながら席を立つと、黒い革張りのソファーへ腰を下ろして優雅に脚を組んだ。
長い脚ですね……社長……
その動作の一つ一つに見惚れていれば、再び社長に「日下部さん?」と呼ばれて、私は浮遊していた意識を現実へと引き戻される。