焦れ甘な恋が始まりました
「……少しだけ、考えさせてください」
それでもなんとか絞り出した言葉は、今の私の精一杯で。
そんな私の言葉に、社長は何も言わずに頷いてくれた。
……物事には、好機というものがあって。
まさにそれが今、社長にされた話。
「俺は、どんな答えでも、最善の方法で日下部さんを応援したいと思ってるから。今日まで……俺の身勝手な感情で振り回した分、精一杯の配慮をさせてもらうつもりでいる」
それこそ……
それこそ私には、あまりにも勿体無い言葉で……とても残酷な、別れの言葉だった。
「……ありがとう、ございます」
社長と私の、未来の見えない “ 現状 ” と。
総務部か、企画部か――――私が進むべき “ 現実 ” は、一体、どこにあるのか。
「……寒くなってきたし、帰ろうか」
この時の私には、どの答えを選ぶことすら不正解のような気がして、仕方なかった。