焦れ甘な恋が始まりました
「まずは……急に呼び出したりして、ごめん。提案っていうのは、さっきも電話で言ったとおり、昨日のことで」
艶(つや)のある、心地の良い低い声。
この声を聞いているだけで心がフワフワと浮き足立って、疲れ切った日に入るお風呂みたいな……なんて。
失礼な例えだけど、そんな幸せに浸った気分になってしまうのだから、どうしようもない。
……ああ、ダメダメ。
今は仕事中なんだから、煩悩(ぼんのう)は捨てないと。
仕事に私情を挟むなんて、そんなの絶対ダメなんだから。
「回りくどい話は嫌いだから、率直に言わせてもらうと……。日下部さんの手料理が美味しすぎて、俺……完全にハマっちゃったみたい」
「……へ?」
「だから、これからは俺のために、手料理、振る舞ってくれないかな?」
「……、」
はい?