焦れ甘な恋が始まりました
 


ブラウンの瞳を柔らかに細めて微笑んだ社長を前に、私は未だに呆然とするしかなかった。


……とりあえず。

社長の食生活が乱れているのだという事だけは、理解した。


仕事で忙しくて食事を面倒くさがるのも、朝ご飯を食べない主義なのも、普段から外食ばかりなのも基本的に全部ダメです、社長。



「日下部さんが作ったお味噌汁とか食べたくて、昨日の夜からそんなことばっかり考えてたんだよね」



―――煩悩。

あまりにもあからさまに私情を挟むどころか、私情でしかない話に返す言葉が見つからなかった。



「せ……接待の話、ではなかったんでしょうか?」

「接待?」

「立石さんが苦手な分野のお店の話では……」


 
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