焦れ甘な恋が始まりました
だけど、私がその理由を尋ねるより先に、ゆっくりと顔を上げた下條さんが、どこか拗ねたような口調で、その理由を教えてくれた。
「……狩野が、杏が結婚式場に行ってるって騒いでたから。それで、もういても経ってもいられなくて、打ち上げを飛び出してここまで来て……」
「え、」
「だって、杏が結婚式の打ち合わせか何かで結婚式場に来てるんだと思うだろ。お幸せにとか、アイツ、大声で叫んでたし……」
「確かに……」
「俺には、杏のことを止める権利もないとは思って、来ることを躊躇もしたんだけど。でも……やっぱり、どうしても黙ってなんていられなくて、それで……」
「下條、さん……?」
「俺は……やっぱり、杏のことを諦めきれない。いつだって自分のことになると不器用な杏のこと……。杏にはその気がなくても、やっぱり杏のことを幸せにするのは俺がいい。だから……俺じゃ、ダメかな?」
一体、下條さんは、何を言って――――
「俺と、ずっと一緒にいてくれない?」