焦れ甘な恋が始まりました
「……本当に、それでいいの?」
静寂に包まれた、社長室。
デスクに座る社長の前に立ち笑顔を見せれば、我が社のNo.1は呆れたような溜め息を吐いた。
だけど、これが私の選択だから。
私が決めた、答えだから。
「はい。私は、これからも総務部で頑張りたいです。なので、申し訳ありませんが、今回のお話は無かったことにしてください」
未だに納得のいかない様子の社長を前に、キッパリとそう告げれば、今度こそ諦めたように背もたれへと身体を預けた下條社長。
それは社長の降参の合図で、私の顔には再び自然と笑みが滲んだ。
「とても、光栄なお話でした。だから、企画部長にも、どうかよろしくお伝えください」
……私を欲しいと言ってくれた企画部には、本当に申し訳ないけれど。
私にはまだ……総務部で、やりたいことがある。