焦れ甘な恋が始まりました
 





「……本当に、それでいいの?」



静寂に包まれた、社長室。

デスクに座る社長の前に立ち笑顔を見せれば、我が社のNo.1は呆れたような溜め息を吐いた。


だけど、これが私の選択だから。

私が決めた、答えだから。



「はい。私は、これからも総務部で頑張りたいです。なので、申し訳ありませんが、今回のお話は無かったことにしてください」



未だに納得のいかない様子の社長を前に、キッパリとそう告げれば、今度こそ諦めたように背もたれへと身体を預けた下條社長。


それは社長の降参の合図で、私の顔には再び自然と笑みが滲んだ。



「とても、光栄なお話でした。だから、企画部長にも、どうかよろしくお伝えください」



……私を欲しいと言ってくれた企画部には、本当に申し訳ないけれど。


私にはまだ……総務部で、やりたいことがある。


 
< 369 / 380 >

この作品をシェア

pagetop