焦れ甘な恋が始まりました
……なんて、まだまだ私みたいな未熟者が偉そうに言えたことじゃないけれど。
だけど、いつか。
「それで、いつか……私が作ったクライアントレシピを引き継いでくれるような、そんな人に会えたら嬉しいです……」
「……へぇ」
「私が始めたクライアントレシピが、この先の会社の未来に残っていったらいいな、って。それが私の、今の小さな夢なんです」
「全然、小さな夢じゃないと思うけどね?」
「社長に比べたら、全然です。だけど、会社の便利屋さんなら、会社の便利屋さんを極めてみせます。だから、見ててください。“ 総務部の日下部さん ” の名前を、社内どころかクライアント中に、轟かせてみせます」
堂々と、そんな大き過ぎる宣言をして。
言ってから、なんだか恥ずかしくなった私は社長の腕から逃れるように身体を捻った。
だけどそれは、私を後ろから抱き締めている社長が許してはくれなくて。
身体に回した腕を更に強めた下條社長は、そのまま私の肩に顎を乗せた。
「……そんなことしなくても、すぐにでも杏の名前は会社に関わる全ての人間に轟くけどね」
「っ、」
「俺と、結婚して。俺の奥さんになったら、杏の存在を知らない人はいなくなるくらい――――俺は、杏のこと、自慢してまわる」
「下條、さん……っ」
「俺の奥さんは、仕事も出来て会社のことも良く考えてくれて……更には料理上手で、俺のことも大切にしてくれる、最高にイイ女なんだ、って」