焦れ甘な恋が始まりました
まるで、スローモーションのように。
静かに腰を浮かせた社長は机に片手をつき前屈みになって私の耳元に唇を寄せると、そんな誘惑じみた言葉を囁いた。
思わずボッ!と火を吹いたように身体が熱くなり、逃げるように背もたれへと身体を預ければ、大袈裟に軋んだソファー。
けれど、そんな私の反応が面白いとばかりにクスリと笑みを零した社長は、私を見据えたまま何事もなかったかのように言葉を続けた。
「もちろん材料費は予め渡すし、なんなら一緒に買い物に行くのもいいよね」
「か、買い物に……って、も、もしかして、社長がスーパーに、とかの話ですか?」
「そうそう。食材選びながら、今日は何にするー?なんて決めたりするのも新婚っぽくて楽しそうだし、すごく興味ある」
「し、新婚ぽくて……って。えと……下條さん、さっきから本当に何を……」