黒いジャージ ~先生と私~
「おじいちゃんしか自分をわかってくれないって思ってるんだろ?きっと、そんなことはない。全部なんてわからないけど、友達だって家族だって、そこらへんにいる猫だって、少しはお前の気持ちわかってると思うよ」
「ふふふふ」
思わず笑ってしまった後に、その顔を見られてしまったことに恥ずかしくなる。
「ま、俺もね。少しはわかる。お前の寂しそうな顔見てると、自分を見てるみたいだ」
「先生も、寂しかったの?」
「今から思えば、若い頃たくさんの人が俺の心を開こうと頑張ってくれてたんだろうなって思う。でも、突っ張って意地張って、かっこつけてたな。誰も俺をわかってくれない、なんて思ってたけど多分一番わかってなかったのは自分自身だ。まぁ、今だって心閉ざしてるのかもしれないけどね」
高垣先生が前を向いて話していたので、私はその横顔をじっと見ていた。
少しだけクセのある髪は、お父さんを思い出させた。
高い鼻に、優しい目。
「先生、本でも出版したら?」
「ぶはっ!お前、ふざけてんの?俺が真剣に話してんのに」
「ちゃんと聞いてますよ。聞いて、心に染みてきたから、本でも出したらって本気で思った。悩める10代を救えるのは、先生みたいな人だなって」
初対面なんだよね、私。
こんなにペラペラしゃべちゃって。