黒いジャージ ~先生と私~
「ここね、ご飯よ~!」
お母さんの声がして、私は涙を拭いて、写真に向かって微笑んだ。
心を少し開くこと。
高垣先生が教えてくれたことを実践しているこの頃。
お母さんにも、笑顔を見せてあげないと。
豚のしょうが焼きとキャベツの千切り、さつまいもの味噌汁。
「あのね、実はここねに話があるの」
こういう場合、嬉しい話である可能性はゼロに等しい。
「何を聞いてもびっくりしないよ」
頑張って笑顔を作って、お母さんを見つめた。
最近機嫌が良かった理由は、もしかしたら・・・・・・
「会って欲しい人がいるの」
「へぇ。ドラマみたいだね」
お決まりのセリフとお決まりの展開に、笑ってしまいそうになる。
せめて、食事が終わってからにして欲しい。
食事が苦くなる。
「同じ会社で働いている人なんだけど、ぜひここねに挨拶がしたいって言うの」
「へぇ」
もうお母さんの顔を見ることができなかった。
私の暗い顔とは正反対の嬉しそうな顔を見るのは辛すぎる。