黒いジャージ ~先生と私~
ふたりで空を見つめていた。
教師と生徒で、歳の差もあるのに・・・・・・
何か通じるものがある気がした。
それは、まだ何も知らない女子高生の勘違いや、錯覚なのかもしれない。
「いつも、お前に元気もらってるな。本当は、お前を元気にしなきゃいけないのに。だめだな、俺」
「そんなことないです!先生に、いっぱいいっぱい元気もらったし、私の人生が変わるきっかけをくれたって思ってる。だから、全然だめじゃない、です」
照れ臭そうに笑った後に、照れ隠しなのか、私の足を足で蹴る。
「ばぁか!褒めすぎ!」
「私、正直なんで、お世辞とか言わないから」
「それはわかってるよ」
流れる雲を見つめながら、私は先生の優しい眼差しの理由がわかった気がした。
悲しみや寂しさ、全部知ってるから、だから優しいんだ。
その瞳の中には、いつもお母さんへの愛があるんだ。
「で、2限目、出るんだよな?」
寝転んだまま、目が合った。
「はい。出ます」
「もうサボるなよ」
私はコクンと頷いた後、寂しい気持ちになる。
サボらなかったら、高垣先生と話せない。
こんな素敵な時間を過ごせない。
だって、私は生徒で。
先生は教師で。
それだけの関係なんだもん。
違うかな?
サボらなくても、話せる?
キーンコンカーンコン
私達の秘密の時間の終わりを告げる鐘がなった。