【短編集】とびっきり、甘いのを。
「っ、陽介!」
白いワイシャツ。
大好きなその背中を呼び止める。
リナちゃんに借りるって、言ったくせに。
リナちゃんのところに行く気配もなく、傘もささず雨空の下に向かう。
そんな陽介を、開いた傘を差し出して入れる。
「陽介を…入れないとは、言ってない……」
消えてしまいそうなくらい小さなその声は、きっと陽介の耳に届いた。
陽介の頬が赤くなったから、きっと届いた。
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