【短編集】とびっきり、甘いのを。
「…ありがと」
顔を逸らして。
明るい髪で、表情を隠して。
ねえ、なんで、赤くなったの?
なんで、リナちゃんに入れてもらいに行かないの?
なんで、最初に私に声をかけたの?
その答えは、まだ聞けなくて。
だけど何だか、幸せな気分で。
髪は崩れるし、靴も濡れる。
湿気は多いし、ベタベタする。
だけど隣には陽介がいる。
歩くたび触れる肩とか、すぐ隣に感じる体温とか。
傘に落ちる雨音とか、陽介の足音とか。
周りのみんなからは、カップルみたいに見えているのかな、とか。