【短編集】とびっきり、甘いのを。
「っ、先輩!」
ぐい、と腕を引かれて、驚いて振り返るとそこには。
「三浦…」
走って来たのか、息を切らした三浦がいた。
そのまま私の手首を掴んで、引っ張ったままずんずん歩き出す。
「え、ちょっと、どこ行くの…!?」
思いの外力強い彼の腕は、振りほどけなくて。
驚いている先輩たちを置いて、彼は中庭のベンチまで歩いた。
ドカッと勢いよく腰を下ろした彼に戸惑っていると、はあ、と大きなため息をついた三浦。
ため息をつきたいのは圧倒的に私のほうなんだけれど。