【短編集】とびっきり、甘いのを。
「よく見てるよね、俺」
冗談みたいに言ったその言葉に、どうしようもなく期待してしまう。
大した意味はないって、分かってるのに。
見てよ、もっと、ちゃんと。
女の子として、見てください。
……なんて言えないよね。
『次は、◯◯駅ー…』
満員電車で混んでいて、降りれない時。
「すみません、降ります」って、先に行って道を開けてくれる。
こういう事をさり気なくできてしまう絢斗先輩は、たった1歳しか違わないのに、追いつけないくらい大人だ。