【短編集】とびっきり、甘いのを。
「っ、寒…」
外に出た瞬間、吹き付ける冷たい風に身をすくめる。
と。
ふわり、首に巻かれたマフラー。
「え……」
「使えば?」
「でもこれ、絢斗先輩の…」
「俺はそんなに寒くないから」
やっぱり優しく笑う絢斗先輩だけど、吐く息は白い。
「だめです、受験生が風引いたらどうするんですか!」
マフラーを取って、少し背伸びをして、絢斗先輩の首にぐるぐると巻きつける。
「ありがとう」
眉を下げて笑う顔に、ぎゅっと胸が締め付ける。
好き。
大好きだけど、この時間にも期限がある。