【短編集】とびっきり、甘いのを。
「あれ、もしかして凛ちゃん?」
「へ…」
男の先輩に話しかけられて、慌てて顔を上げる。
あ、もしかして、絢斗先輩のお友達かな。
一緒にいるところ、見たことがある気がする。
「絢斗探してる?」
「あ、はいっ」
「あいつ、昼休みは図書室で勉強してるよ」
「え……」
そう、なんだ。
「ありがとうございます!」
教室を出て、図書室に向かう。
全然、知らなかった。
…でも、まあ、そうだよね。
3年生からしたら受験まであと2ヶ月を切っていて、今はもう追い込みの時期だ。
勉強、するよね。
ただ、絢斗先輩は何でも軽々とこなしてしまうイメージがあったから。
影で努力しているんだろうな、とは思っていたけど、なんていうか。
本当に絢斗先輩は先輩で、私より年上で、私より遠くにいて。
卒業という2文字を、急に間近に感じてしまった気がした。