【短編集】とびっきり、甘いのを。
開けようとすると、キイ、と少し軋んだ音を立ててる図書室のドア。
そっと中を覗くと、勉強している三年生がたくさんいた。
その中で一番に見つけた絢斗先輩は、眼鏡をかけてて。
それが格好良すぎてどうしよう。
でも真剣な顔に、声をかけることはできなかった。
「…帰ろう」
邪魔なんてできない。
絢斗先輩が、遠い。
手元に残されたチョコデニッシュ。
3年生の教室、絢斗先輩の机の上に置いて、自分たちの教室に戻る。
……知らないうちに机の上に置いてあったパンなんて、食べるだろうか。
怪しいよね、私だったら食べないかも。
少し開いた窓から吹き込む冬の風に、きゅっと目を閉じた。