【短編集】とびっきり、甘いのを。
「おはよう」
朝の電車。
今日は、先に声をかけたのは絢斗先輩の方だった。
「おはようございます!」
そしまた、他愛のない話。
電車に揺られて、絢斗先輩を見上げて。
目が合うと、笑ってくれる。
幸せ。
幸せだから。
だから、終わらないでよ。
幸せな毎日なんて、あっという間に過ぎて。
この時間は二度と戻らない。
そのくせ、この想いだけはいつまでもいつまでも私の心に残るんでしょ?
…なんで、終わりが来るんだろう。
なんで、子供のままじゃいられないんだろう。
残り少ないこの時間を、もっと大切にしたい。
なのに、どうしたらいいのか分からない。
どうしたら、後悔なく過ごせるんだろう。
どうしたら、満足できるんだろう。
あわよくば、私はこの先も絢斗先輩と笑っていたい。