【短編集】とびっきり、甘いのを。
絢斗先輩にとって、きっと私なんて大した存在じゃなくて。
ただ、少し仲の良い後輩で。
私がどれだけ絢斗先輩を好きになったところで、それは変わらなくて。
同じ電車。
この共通点がなくなってしまえば、会える理由だって消えてしまう。
「…そうだ、チョコデニッシュ」
駅に着いて、電車を降りた絢斗先輩が振り返る。
「ありがとな」
ああ、もう。
その笑顔は、チョコレートよりも甘くて。
欲しいの、溶けないチョコレート。
ないと分かっていても、どうしても。