【短編集】とびっきり、甘いのを。
それから席が変わっても俺は陽奈にちょっかいを出すのをやめなくて。
ーーーそんな夏の、ある日だった。
夏休みも中盤、クラスのみんなで肝試しをやろう、なんて夜の学校集まった金曜日。
夏休みでずっと会っていなかったから、久しぶりに見た陽奈は、初めて見る私服姿で。
フルーツ柄のワンピースにサンダルっていう、想像よりずっと大人っぽいから。
だから柄にもなく、ドキッとしてしまったのが悔しい。
「ね、尚ー!」
「お、梨乃」
呼ばれた名前に振り返れば、女友達の梨乃。
「尚、このショーパン新しいんだけど、どうー?」
俺の前でくるりと回る梨乃はかなり短いショートパンツで、長い足が際立つ。
「可愛い可愛い」
「もう、ちゃんと答えてよぉ〜」
…俺、本当はこういう服が好きなはずなのに。
ワンピースとか女の子らしいのより、色っぽいのが好きなはずなのに。
なんで、陽奈の服がいちばん可愛いなんて思うんだろう。
その理由が、わからないわけじゃないけどー…