【短編集】とびっきり、甘いのを。
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「…黒澤くん?」
呼ばれた名前に、ふと我に返る。
俺の腕と壁の間に閉じ込められたままの陽奈が、不思議そうにこっちを見上げていた。
「なんでもないよ。
そんなことよりほら、キスしないと離してあげないけど?」
くいっと顎を持ち上げると、ピンク色に染まる陽奈の頬。
いつまで経っても変わらないこの表情は、やっぱりマシュマロみたいで。
そんなことを考えていると、ちゅ、と唇に軽く触れたもの。
いつの間にか近付いた陽奈の顔に、一瞬、何が起こったのか理解できなかった。
「…し、した、よ」
真っ赤になって目をそらす。
それは俺も同じで。