【短編集】とびっきり、甘いのを。
と、今度は着信音が鳴った。
少し迷ってから、通話をタップすると。
『ごめん、起きてた?』
久しぶりに聞いた恭ちゃんの声に、不意に泣きそうになる。
「……寝てた」
……嘘つき。
恭ちゃんのこと考えてたくせに。
いつもと全然変わらない恭ちゃんに悔しくなって、つい意地を張ってしまう。
こういうところが、子供なんだ。
『そっか、ごめんな起こして』
「…どうか、したの?」
気を緩めると泣いてしまいそうだ。
…電話越しだから、泣いても気付かれないかな。
『んー、声聞きたくて』
「っ…」
どうしてそういうズルいことを、普通に言うんだ。
大人の余裕が、悔しい。