【短編集】とびっきり、甘いのを。
こういう言い合いだって、本当は嫌いじゃない。
話しかけてくれるだけで、他の子よりも特別な感じがして、嬉しかったりもする。
だけど、でも。
他の女の子には優しく笑いかける陽介に、私は女の子として見られてないのかなって切なくなる。
「げ、雨かよ」
長い授業も終わり、放課後。
灰色の空から降る雨を見て、昇降口で顔をしかめる陽介。
「お前、傘忘れたのかよ」
「え、バカでしょ…今日は絶対降るって…」
みんなに笑われて、拗ねる陽介と目が合った。