【短編集】とびっきり、甘いのを。
「…っとに、可愛くねぇな」
その言葉が胸を刺す。
人のこと言えないけど、陽介の言葉はいつだって心にくる。
それは他の誰でもない、陽介だからで。
「いいや、リナに入れてもらう」
そう言って背を向けてしまう陽介に、きゅっと胸が締め付けた。
リナちゃんは可愛くて、素直で、私とは正反対のふわふわした女の子で。
なんで、女の子なのよ。
本当に嫌い、大嫌い。
泣きそうになって雨空を見上げる。
灰色の空は冷たい雫をザアザア落とす。
その音はなんだか胸に響く。
なんで、可愛くなれないの?
なんで、私には意地悪なの?
ねえ、陽介。
私たちこのままずっと、喧嘩友達のままなのかな…?