好きの代わりにサヨナラを《完》
どうしよう……
昨日見た光景が頭から離れない。

瑠菜とは会いたくないけど、今日もダンスのレッスンがある。
まだ仕事が少ないあたしたちは、事務所のスタジオでレッスン漬けの毎日を送っていた。

学校の授業が終わると、制服を着たまま事務所のスタジオに向かう。



瑠菜は一ノ瀬恭平と付き合ってるの?

相手が大物だから驚いてる訳じゃない。
あたしたちアイドルがそんなことしていい訳ない。



瑠菜に裏切られた。

でも、あたしは彼女に詰め寄ることができなかった。
元々地味だったあたしは、今でもギャル系の子が怖い。

あたしは割りきれない気持ちのまま、ジャージに着替えダンススタジオに入る。



瑠菜は入ってきたあたしに気づいたけど、挨拶すらしない。

一瞬あたしに視線を向けた後、隣にいた芽依﹙メイ﹚との会話に戻っていった。

芽依もギャルぽいけど、意外と純粋というか自分に自信がない所もある。

いつも瑠菜には逆らえない感じだ。
瑠菜と芽依はオーディションの時から仲がよかった。



スタジオの隅で、一人でストレッチするあたし。

「ほのか、おはよー」

この業界は、夕方でも『おはよう』と挨拶するらしい。
最初は不思議に思ったけど、今はもう慣れてきた。

「おはよう、美憂」

美憂は笑顔で手を振ったかと思うと、少し困った顔をして近づいてきた。
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