好きの代わりにサヨナラを《完》
あたしはポツンと一人で立って、セットを動かすスタッフの様子を眺めていた。



マネージャーはこういう時、あたしによく話しかけてくれる人だった。

みんなが楽しそうにブログに載せる写真の撮り合いをしている部屋の隅で、あたしが一人で一生懸命自撮りしていたら「ほのかちゃん、撮ってあげようか」と声をかけてくれる人だった。

暇そうにしているメンバーをみつけると、あたしと一緒に写真に写るように誘いに行ってくれていた。



みんなが仲良く話している部屋の片隅で、一人で黙々とスマホをいじっていたら、「コンビニで買った新しいおにぎりがおいしかった」とか「昨日の雷で家の電化製品が壊れた」とか他愛もない話をして笑わせてくれる人だった。

そんな様子を見て、「マネージャーは、ほのかばかりひいきしている」と陰口を言うメンバーもいるほどだった。



だけど、今日のマネージャーは一人で立っているあたしに話しかけてはくれなかった。
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