好きの代わりにサヨナラを《完》
「お疲れさまです!」

グループ最年少の愛流﹙アイル﹚が、あたしの後ろを元気よく走り抜ける。

大人びた美少女だけど、まだ小学6年生だ。

怖いもの知らずの彼女は、一ノ瀬恭平がいるのも気にせず更衣室に入ろうとした。



そんな彼女を、恭平は呼び止めた。

二人で何を話しているんだろう。

無邪気な愛流が心配になって、あたしは二人の会話に聞き耳を立てる。



どうやら連絡先を交換しているらしい。

恭平はスマホになにやら入力すると、芸能人らしい爽やかスマイルを愛流に振り撒いて隣のスタジオに入っていく。



小学生の愛流にまで声をかけるなんて信じられない。

このままだと、うちのグループがめちゃくちゃになってしまう。

ドアのガラスからスタジオをのぞくと、中にいるのは恭平一人だけだった。

あたしは意を決して、スタジオのドアをノックした。
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