好きの代わりにサヨナラを《完》
「今日はテレビ初公開の秘蔵VTRがあります」

女性アナウンサーがもったいつけた説明をしてから、秘蔵映像が流される。

サプライズのつもりなのか、その内容はあたしたちも事前に知らされてなかった。

あたしたちの前のモニターに、その映像が映し出される。

そこに映っていたのは、一年前のあたしだった。



『弓槻ほのか、15歳です。よろしくお願いします』

オーディションを受けたのは、一年前のちょうど今頃だった。

いかにも素人っぽいマイクの持ち方で、たどたどしく自己紹介するあたしが映っていた。

まだ何も知らないあたしは純粋でまっすぐな目をしていて、今のあたしよりずいぶん幼く見えた。
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