好きの代わりにサヨナラを《完》
「初めて付き合った彼氏だったんだよね……それでもあたしは、デビューすることを選んだ」

莉緒は両手を首の後ろに回して、ネックレスを外した。



「後悔はしてないよ……
でも、それでよかったのか正直わかんない」

莉緒は、恭平とお揃いのリングを鏡の前のテーブルに置いた。



「もし……もしもだけど、お互いのことがずっと好きでいられたら……二十歳になったら結婚しようって別れた」

あたしは、テーブルに置かれたシルバーのリングに視線を向ける。

メイク用の鏡につけられた照明が反射して、キラキラ光っている。



「彼は、そんなこともう忘れてると思うけど……」

うつむいていた莉緒は、顔を上げて鏡の中に映る自分をまっすぐ見据える。

一瞬普通の女の子の表情を見せた莉緒は、もうステージに立つアーティストの顔に戻っていた。
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