好きの代わりにサヨナラを《完》
「……なんか、暗い話しちゃってごめんね」

大切なことを話してくれた莉緒になんて声をかけたらいいかわからなくなって、あたしは黙りこんでしまった。

莉緒は、そんなあたしを気づかって振り返る。



「向こうはあたしの歌聞いてるかわかんないけどさ、たまに彼を思い出すことあるよ……なんか情けないね、あたし」

「そんなことないよ……」

そう言って苦笑いする莉緒に、あたしは小さく首を振る。



「じゃ、行ってくるね」

姿勢を正して立っていたあたしの肩をポンと叩くと、莉緒はヒールを鳴らしながらステージへ向かって行った。
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