好きの代わりにサヨナラを《完》
どのくらいの間ブランコに揺られていたんだろうか。

いつの間にか、日が暮れ始めていた。



あたしはブランコから立ち上がり、ヘッドホンをつけたまま歩き出す。

公園を抜けて、いつも蒼と歩いた懐かしい道を通る。

蒼の家は、あたしの家よりも手前にあった。

実家に向かう途中、蒼の家の前を通り抜ける。

あたしは蓮見と書かれた表札を見て立ち止まった。



蒼は、家にいるんだろうか。

二階にある彼の部屋の窓を見上げる。

カーテンが閉められているけど、うっすら明かりがついている感じがする。



アイドルに戻るなら、もう蒼に会ってはいけない。

だけど、今度東京に戻ったら二度と会えなくなるような気がした。

あたしはスマホから流れる音楽を止めて、ヘッドホンを外す。

しばらく迷ってから、インターホンを鳴らした。
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