好きの代わりにサヨナラを《完》
蒼のお母さんに案内されて、二階の蒼の部屋に向かう。

笑顔で「ゆっくりしていってね」と部屋のドアを開けてくれたお母さんに、あたしは微笑み返すことができなかった。

小さくおじぎをして、蒼の部屋に入る。



蒼は何をしていたんだろう。

くつろいだ服装で、慌てて部屋を片付けていた。

床の上に転がっていた雑誌を本棚に戻してから、蒼はドアの前に突っ立っているあたしに視線を向けた。



「座れば?」

蒼は、いつものちょっとぶっきらぼうな口調だった。

何も優しいことは言われてないのに、あたしは蒼の声が聞けただけで嬉しかった。



「うん」

あたしはうなずいて、蒼の近くに行く。

昔のあたしなら蒼のベッドに勝手に座っていたけど、今日は床の上に座った。
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