好きの代わりにサヨナラを《完》
「実家に……帰ってきちゃった」

今ここにいるあたしを見れば普通にわかることを、あたしは敢えて説明してしまった。



「そう」

蒼は適当な返事をしながら、まだ机の上を片付けている。

あたしは何を話したらいいのかわからなくなって、机に散らばっていたものを引き出しにしまう蒼の背中を見上げていた。

もう全部片付け終わったのか、蒼が振り返る。

蒼はあたしと向き合って、床の上に座った。



蒼は一度あたしに視線を向けたけど、あたしと目が合うとまた視線をそらした。

気まずい沈黙に、何をどうしたらいいのかわからない。

あたしは床の上に横座りしたまま、音を立てないようにツバを飲み込んだ。
< 165 / 204 >

この作品をシェア

pagetop