好きの代わりにサヨナラを《完》
「なんか、ごめんな……」

蒼が何のこと謝ってるのか、わからない。

あたしは小さく首を振った。



「全然、蒼は悪くないよ」

蒼と会うのは、握手会で告白されて以来だ。

蒼に会いたくてインターホンを押したけど、実際会ってみると昔みたいに気軽にしゃべれなくなってしまった。

蒼も緊張しているんだろうか。

不自然に自分の髪を触って、手のやり場に困ってる感じがした。



「俺さ……ほのかの写真、オーディションに送ったこと後悔してる」

ポツリとつぶやいた蒼の言葉に、なんて返事をしたらいいのかわからない。

自分でオーディションに応募する勇気がなかったあたしの背中を押してくれたのは蒼だった。
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