好きの代わりにサヨナラを《完》
あたしは、このまま東京に戻ってきて本当によかったのだろうか。



『俺は、お前を行かせたくない』と言った蒼の声が、今もあたしの耳に残っている。

蒼とは、もう会えなくなってしまうんだろうか。

彼に抱きしめられた時、怖くなって逃げてしまったけど、もう二度と会えないのならちゃんと彼とキスしたかった。

あたしは人差し指で、彼に触れられなかった自分の唇をそっとなでた。



蒼との甘いキスを思い浮かべることは許されない。

あたしは現実の世界では叶わぬ夢が見られるように願って、スマホを握ったまま目を閉じた。
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