好きの代わりにサヨナラを《完》
「まだ他の二期生はレッスン中だけど、この子だけライブに出ることになってる。空いてる美憂のポジションに入ってもらうの」

「そうなんだ……」

いつまでも美憂のポジションがぽっかり空いているのは、あたしも寂しかった。

でもその穴は一期生の誰かが埋めると思ってたから、少し意外だった。

あたしたちの視線に気づいたのか、優奈は振り返ってあたしにちょこんとおじぎをした。



「優奈ちゃん、おいで」

あたしたちに見られているとやりにくいのか、踊るのを止めてしまった優奈を涼夏が手招きする。



「優奈ちゃん、ほのかに会うの初めてでしょ?」

「はい」

小走りで駆け寄ってきた優奈は、あたしの前で立ち止まると子犬のようにうるうるした目をあたしに向けた。
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