好きの代わりにサヨナラを《完》
「違うんです……」

優奈は、きゃしゃな手で頬をつたう涙をぬぐう。



「あたし、ほのかさんのことが大好きで……ずっとほのかさんみたいになりたいと思ってました」

「あたしに……?」

あたしもデビュー前憧れていた芸能人はいるけど、自分がこんなふうに言われるのは初めてだった。



「ほのかさんと一緒に歌えて、すごく嬉しいです」

涙をためてまっすぐあたしを見上げる彼女の目は、お世話を言っているようには思えなかった。

なんだか照れくさくなってしまったあたしは、隣にいる涼夏と顔を見合せる。

そんなあたしたちを見て、涼夏は母親みたいに穏やかに微笑んだ。
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